「いっそアンタの子でも孕めたらよかったなー」

「・・・・・・まって何がいっそなのかお兄さん分からない。」

「アンタはお兄さんじゃなくてオレらからしたらじじいだよ、十分。」





ケタケタと歯を見せて笑う青年。

さらさらの銀髪、白い肌。黙っていれば美青年だが口の悪さは何処かの眉毛紳士や小鳥乗っけた不憫に近い。

ため息を零し、綺麗な子がそんな言葉遣いしちゃだめ、と軽く叱る。

何度言っても直らなかったからこれからもこの口の悪さが直ることはないとわかっているけど、つい言ってしまうまうのはパターンになったからだ。





「で、何で急にそんなこと言っちゃったわけ?」

「んー?さぁ。何ででしょうか?」

「分からないから聞いてるんでしょうが。あまり大人をからかわないの。

 お兄さん帰っちゃうよ?」

「帰るんだったらお菓子だけは置いてけよ。」

「・・・・・・それはちょっと傷つくよー?」





わりぃわりぃ。

白い歯を見せ反省してる様子もない謝罪。

ほっぺを一回つねるだけで許してあげるから早く言っちゃいな。

意外と伸びない頬を抓り上げ、小さい子を諭すような声で促す。

悪態をつき、赤く色づいた頬をさすりながら諦めたように言葉を漏らした。





「・・・・・・アンタと一緒にいたって、そんなモノを何か残せたらいいなって思っただけだよ。

 子供だったら忘れようにも忘れれないし、他の奴らにも見える。んでオレとアンタが一緒にいた証にもなる。

 だからアンタの子供でも身ごもれてたらよかったのにな、って結論に至ったワケだ。」

「・・・・・・・・・オレの子供欲しいなんて、それデプロポーズ?」

「髭全部引っこ抜くぞこの野郎。」

「照れ隠しでももう少しマシ無いの?!」





抓ったときよりも赤く染まる頬。

白いこの子には赤がよく映える。今度真っ赤な薔薇でもプレゼントしてあげよう。

凄く嫌がるだろうけれど。

むくれてそっぽを向いてしまった可愛い子の頭をなでる。





「俺はね、君がいてこうやってたわいのない話をして、くだらないジョークで笑った。

 その思い出があればそれでいいんだ。形に残るものは朽ちてしまうけれど、思い出は朽ちないからね。」

「忘れたりはしねぇのかよ。」

「しないさ。だってお兄さんがこんなにも愛したんだからね。」





ちゅ。と可愛い音をたててキスをする。

いくら口が悪くても、こういう事にはいつまでたっても初心なこの子はまた顔が赤く染まる。

まるで茹でたタコだ。





「〜〜〜っ!!くっさいセリフ言ってないでもう帰れおっさん!!」

「はいはい。もう時間みたいだしね。」





来たときには青かった空はオレンジ色に変わっていた。

座っていた椅子から立ち上がり、ハンガーに掛けていた上着を手に取る。

扉に向かおうとしたらおい、とぶっきらぼうに呼ばれた。

近づけば胸倉を掴まれ引き寄せられ、勢いだけの軽いキスをされた。

相変わらずムードないね。笑えばうるせぇと照れ隠しの辛辣なお言葉。

可愛い、愛おしい。

色んな想いを込めてお別れのハグとキスを捧げ、今度こそ部屋を後にする。





「・・・A demain Francis.」





扉を閉める寸前に彼の声が聞こえたが、聞かなかったフリをして白い扉を閉める。





『またな、フランシス』





「また、なんてもうないのにね。」





あの子は口は悪かった。だけど残酷な言葉を吐いたのは今が初めてで、最後だ。





「Au revoir.Je vous aimais.」





扉の向こうにいる君には聞こえただろうか。

答えは聞かない、聞こえないまでいい。深く残る未練を断ち切るように俺は白く長い廊下を歩き出した。










『さようなら。俺は君を愛していた。』










その日の夜、彼は人としてもあまりに短い一生を終えた。

死因は内臓出血。

それは悲惨な事故が招いた悲劇だった。





棺に眠る彼の最後を飾ったのは真っ赤な薔薇。

思ったとおりとても彼に似合っていた。























アーサーかフランシスか迷った。
お兄さんには悲恋とか悲しい系が似合うと勝手な思い込みによりお兄さんに。