「国外に?」

「ああ。お前この国で生まれてから一度も外に出たことないんだろ?

 そろそろ出ないとどんどん置いていかれるぞ。」

「うーん・・・今まで不便になったことないから別に・・・」





アーサーの用件は、ボクをこの島以外の国に連れていくことだった。

でもボクはあまり乗り気になれない。

ボクが言ったようにこの国は他の国と交流を持たなくても、今までなんとかやっていけてるのだ。





「いいから行ってみろって。

 ここからだと・・・この前俺と同盟組んだ日本が近いか。」

「にほん・・・・・・」





『にほん』

その3文字が渋っていたボクの気持ちを変えた。










愛し恋し貴方様へ 02










行くと決まったら出発まではあっという間で、気が付けば日本に到着していた。

殆どが木で出来ているデバンジェの建物とは違い、日本は石(レンガというらしい)で出来た建物で一杯だった。

人の服はきらびやかなものばかりで眩しい。

ボクはデバンジェと全く違う世界に圧倒された。

何故か付いてきたリーオは初めて見る世界興味津々で、あれは何だこれは何だとアーサーに聞いている。

放っておくと際限なく続きそうだから止めて、日本側が用意してくれた馬車という乗り物で移動した。

乗り心地は・・・うん、砂利道は自分の足で歩きたいと思った。ガタガタ揺れて酔う・・・





港から離れ、ついた場所は先ほどの町の様子とは違ったところだった。

ごろごろと小石が転がっている道に、木で囲われた家々。

こちらが日本らしい町並みだとアーサーは言った。

港や大きな町は欧米文化を取り入れているらしい。

馬車から降り、アーサーが家の戸を叩く。

ボクはアーサーの後ろに立ち、緊張しながら戸が開くのを待った。

他の国に会うのはアーサー以来、約10年ぶりだ。

ガラスと木で出来た引き戸の向こう側に人影が映る。





「アーサーさん、ようこそいらっしゃいました。」

「よ、よぅ。」

「どうぞ上がって下さい・・・おや、そちらの方は・・・?」

「こいつがこの前言ってた奴・・・ってなんで後ろ隠れてんだ?」

「あぁ、彼ですか。」





袖が広く長いアイビーグリーンの服の上にスパニッシュバイオレットの上着を着た黒髪の人。

玄関から出てきたその人は少し屈んで(日本人は小さいってアーサー基準だったのかよ!かがまれた!!(ショック))何を言っていいかわからないボクの目を見て言った。





「初めまして。私本田菊と申します。」





カクリ、と頭を下げる本田・・・さん。

アーサーから事前に聞かされていた日本の挨拶の一つだと思い出し、慌てて同じように頭を下げる。





「あ、あの・・・・デバンジェです。こっちが・・・」

「こいつの上司でデバンジェ国王、リーオ・デバンジェだ。」

さんにリーオさんですね。

 立ち話もなんですから、どうぞお入り下さい。」





そう言われ、ボクたちは本田さんの家に入った。

先にこっちの習慣で靴のまま奥に進もうとしたリーオのお陰で、ボクは間違えずにすみホッとしたのは内緒だ。










庭を眺めれる部屋に案内され、お茶とお菓子を出してもらった。

日本のお菓子はもちもちしてて甘くて、すごく美味しかったです。

生まれて初めて食べる味に感動し、一息ついたところで話に入った。





「それでお二人は日本に観光にいらした、ということでしょうか?」

「あぁ・・・まあそういうことになるな。」

「てかアーサーに強制的に連れてこられたってとこだ。」

「別にお前はついて来なくてよかったんだよ。」

「うるせぇ元ヤン」

「元ヤンいうなばかぁ!」





ぎゃいぎゃいと頭上を飛び交う怒声と言い合い。

いつものことだからとめない。

一人だけ食べ終えていなかったお菓子を食べ終えると、小皿にピンク色のお菓子が置かれた。

置いたのは本田さん。





「あ、の・・・?」

「美味しそうに食べていらしたので・・・ご迷惑でしたか?」

「いえ!そんなことない・・・です!

 ありがとうございます!!」





置かれたそれを掴みまた一口含む。

その様子をみて本田さんはにこりと微笑んだ。

甘い皮と中に入った酸っぱい果実が拡がったけど、さっきより味が分からなかった。





「・・・・・・」

「おっと・・・悪い本田。俺そろそろ戻らねぇと。

 明日には日本発たなきゃいけないんだ。」

「そうですか。さんとリーオさんも国へ戻られるのですか?」

「はい、急に国を出て来たので、「いや、オレらは暫く日本を観光してくよ。」

「ちょ、リーオ?!」





直ぐに戻らなければいけないと伝えようとするボクの言葉を遮ってリーオが言った。

何急に言い出すの?!と言おうとした口は、リーオが視線で閉じる。





「折角島から出たんだ。ついでに他の国のことを学んでくのも王様の仕事じゃね?

 国のやつらならオレたちが2、3日いなくてもやってけるだろうし。」

「それは・・・そうだけど、」

「ならいいじゃねぇか。決定ってことでアーサー宿の手配よろしく」

「お前なぁ・・・んなこと急に言われても」





有無を言わせず滞在を決定してしまったリーオ。

その強引さにボクとアーサーはたじろいでしまう。





「あの、もし宜しければこの家に泊まっていきませんか?

 日本を観光するのならば是非ご案内したいですし、私もあなた方の国のお話をお聞きしたいです。」

「本当か?ならそのお言葉に甘えさせてもらうぜ。な、?」

「だから・・・・・・リーオっ!」





こうしてボクの意見を聞くこともなく、2泊3日の修学旅行が決定された。

まぁ・・・リーオはボクの上司だから意見しても結局は従うしかないんだけどね・・・はぁ・・・