小さい頃から戦隊もののヒーローを真似するより、木の棒を振って魔法使いの真似をしていた。

小学校のときは野球よりサッカーより読書が好きだった。

人気のあったカードゲームは戦って遊ぶんじゃなくて、モンスター見たさに唯集めてた。





何が言いたいかって、俺は生まれたときから他の子とちょっと違っていたということ。

そして中学に上がったとき、俺は自分が人とちょっと違う程度の存在じゃないと知った。










彼方渡(ヲトワタリ)










「ただいまー・・・って、誰もいないのか。」





新品の白い運動靴を脱ぎ捨て台所に向かう。

夕陽でオレンジ色に染まったキッチンには、いつもこの時間に夕食の支度をしているはずの母さんの姿はなかった。

いつもの買い物袋がない。買い忘れでもしたのかな。

よくあることだから特に気に留めることもしないで、テーブルの上にあったスナック菓子と冷蔵庫のジュースを取り出し、2階の自分の部屋に向かった。

ドアを開けて通学用のリュックと学ランの上着を床に投げ捨てて、ベッドに転がって布団の上に置いてあった読みかけの本を手に取る。

背表紙に書かれたタイトルは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

『ハリー・ポッター』シリーズの第三巻で、俺の一番好きな巻だ。

よく読むせいでカバーはボロボロ、ページも所々折れ曲がってしまったこの巻にはハリー・ポッターの両親とその友達が出てくる。

『親世代』と呼ばれるメンバーの中で、俺が一番好きなのはシリウス・ブラックだ。

ちょっと馬鹿っぽくて友達思いで、何故か親近感のようなものを感じている。

4巻の登場シーンも好きだなぁ、なんて別のことも考えながらページを捲った。




















ぴちゃん、ぴちゃん





水が落ちる音で目が覚める。

何時の間にか寝ちゃったんだ・・・今何時だろ・・・水の音ってことは雨でも降り出したのかなぁ・・・

目を擦りながら身体を起こすと、寝ていたはずの布団の感触がないことに気付いた。

寝ぼけていた頭が一気に覚醒する。

よく見れば辺りは部屋と呼べるような場所じゃなく、上も下も辺り一面全て真っ黒に染まっていた。

夢・・・?

それにしては寒さとか、やけにリアルだ。

立ち上がって、とりあえず歩いて様子を見てみようと一歩踏み出す。

するとそこに足場はなくて体重が掛かった右足から逆さになって落下していく!

暗くて底は見えない・・・・・・けど、このまま落ちたら・・・・・・俺死ぬ?!!!





「え、ちょ、ま・・・っ!タンマタンマ!ストップ、とまれえぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」





いくら手足をバタつかせてもスピードは緩むどころか加速していく。

ああもう、嘘だろ!俺こんな変な場所で死ぬのか?

死ぬんだったら痛くないほうがいいなぁ、ともがくのを止めたとき頭に声が響いた。

それは旋律のような、不思議な声だった。

俺はその声が何かも分からないまま、聞こえてくる方へと手を伸ばした。




















先にあったのは炎のように揺れる青い光だった




















ドゴッ!!





「ぐへぇっ?!!」






頭から落ちていっていたはずなのに、衝撃と鈍い音が上がったのは背中。

これ背骨折れてない?折れてないよね?

痛む背中を押さえながら上半身だけを起こすと、あの暗闇は消えていた。

一瞬戻ってこれたのか、と思ったけど、どうみても自分の部屋ではない場所にまた呆然とする。

ちくちくとしたカーペットに真紅のカーテンがかかった天蓋つきベッドが4つ。

そしてこっちを見ている4組の瞳は、俺の知り合いのものじゃない。





「Hey,you.」





驚いた表情で俺を見ていた4人のうちの1人が声を発する。

その言葉は馴染みはないけど、聞いたことのある俺の苦手なもの。





「It came from where?」





・・・・・・・・・えーと、これどういう状況?!