「さてお腹も膨らんだことだし、そろそろ寝るとしようか。」
夕食後、買い物の組み合わせをした袋を取り出しながらジェームズが言う。
制服を明日の朝取りに行かなきゃいけないから、今日は漏れ鍋で泊まることになっている。部屋割りは2人と3人。
ジェームズ、ピーター、リーマスの順で袋が回されたところで青い包みのチョコが全部出た。
青い包みのチョコは全部で3つのはずだから、くじ引きは俺とシリウスの手に渡らずして決まった。
シリウスとはまだ一言も話していない。
2人部屋になったのは気まずいけど、これはチャンスだと意気込んだ。
おいでませダイアゴン横丁〜お泊り編〜
部屋に2つあるベッド。その奥側に俺は寝転がった。
シリウスは部屋に入ってすぐバスルームに行ってしまった。
・・・・・・同級生から鈍いといわれていた俺でも明らかに避けられていると分かる。
どうでもいい相手なら気にしないけど、シリウスは俺が一番好きな登場人物だからちょっと辛い。
嫌われるようなことしたのか思い出してみる。会ってまだ1日しかたってないし話したこともないから思い当たらない。
天井から急に降ったりはしたけど・・・・・・
「(嫌われてるというより、警戒されてる?)」
何となくこれが近い答えだと思う。
きっとシリウスは嫌いなら嫌いとはっきり言うタイプだ。
警戒されている、と考えるなら突然天井から現れたこともあり納得いく。
それでもあんなに睨むことはないじゃないか。吊り目だから怖い。
がちゃり、とバスルームのドアが開いた。
髪をタオルでがしがしと乱暴に拭きながら寝間着に着替えたシリウスが現れる。
バスルームからサイドテーブルを挟んで隣にあるベッドに付くまでシリウスはこちらを見ず、空いたと一言だけしゃべりベッドに腰掛けた。
ずきり、と胸が痛む。
「・・・あのさ、俺昔から友達に鈍いってよく言われるんだ。」
「・・・・・・」
「でも流石に分かるよ。俺に対してあんまりいい感情持ってないって。
だけど何も話してない、互いに何も知らないのに目もあわせてくれないのは、すっごく辛い・・・」
そこでシリウスは初めて気が付いたらしい。驚き顔を上げる。
俺は喋ってるうちに涙声になっていた。泣くつもりなんてないのに。
潤んだ瞳を袖で擦り、居た堪れなくなってバスルームに駆け込んだ。
バスルームのドアが勢いよく閉められた音でシリウスは我に返る。
姿現しの出来ないホグワーツに突然降って現れて、怪しいと思い警戒していたことは事実。
それにを見たときから感じている苛立ちのような感情。
八つ当たりのようにその感情をぶつけていたのも事実。
「(ダンブルドア校長がホグワーツに留まることを許したやつだ。それにオレたちみたいな子供に任せてる。
怪しい奴であってもオレが警戒して邪険に扱うことはなかった。)」
バスルームに行くの横顔。片腕で顔を隠していたが潤んだ目元はシリウスの目にも入っていた。
自分の勝手な感情でを傷つけてしまっていた。
罪悪感と後悔の念がシリウスの胸に重く圧し掛かった。
「(遅い・・・)」
がバスルームに入って30分は経っただろうか。
東洋人は長風呂が好きだとマグルの本で読んだことがある。
が、これは長すぎるのではないだろうか・・・?
シャワーで簡単に済ませてしまうシリウスがそう感じるだけかもしれないが、先ほどのこともあり心配になってくる。
会いたくなくて出てこないだけかもしれないが。
ベッドから立ち上がりバスルームのドアの前にたつ。
そこから迷いながらも、恐る恐るノックをする。返事は一拍置いて帰ってきた。
「・・・何?」
「あ、いや・・・・・・長いから、のぼせてないか心配になって・・・」
返事を貰ってからの事を考えてなくて、取ってつけた理由になってしまったがなんとかごまかす。
「あー・・・俺長風呂好きで、30分とか普通に入るんだ。
心配してくれてありがとう。」
そっかこっちでは長風呂の風習少ないのかー。と呑気な声が響く。
先ほどの事を気にしすぎていたのか。シリウスは軽い声色にぽかんとしながらも、頭を振って思考を取り戻す。
平気そうに振舞っていても傷つけていたことに変わりない。
シリウスは一度深呼吸してドアの向こうに話しかけた。
「さっきは、その、悪かった。
言い訳は無い。オレが謝るだけでお前の気が済むとも思ってない。
だからお前が気の済むなら殴ってもらっても・・・」
「」
「っ?!」
何時の間に湯船を出たのだろう。木製のドアのすぐ向こうからの声がした。
驚いたシリウスは続けようとした言葉を飲み込み、を待つ。
「俺の名前。。
俺暴力嫌いだから。これから名前呼んで、友達になってくれるなら許してやる。」
「・・・・・・変な奴。」
「あ、そんなこというんだったら許さない。」
「わ、分かった!・・・悪かった、。」
「よし許す。」
初めて口にした名前には満足そうに笑う。
すとん、とシリウスの胸に圧し掛かっていた何かが落ちた。
たった5分のやり取りでイライラしていた気持ちも何もかも消え、もっと早くこうやって話せばよかったと苦笑した。
「ん〜、どうやら上手くいったみたいだね。」
「ジェームズ何やってるの・・・?」
「これかい?マグルが考えた簡単なもので出来る盗聴方法さ!壁の薄いところ限定だけどね!」
尋ねたピーターは引き、それは犯罪だよ、と突っ込む気にもなれずリーマスはため息をついた。
何かの魔法が掛かっているんだろうけど、コップ片手に語るジェームズは滑稽だ。
「で、何で袋の中身を小細工して今夜仲良くさせたの?もう少し日にちが経ってからのほうがよかったんじゃないかな。」
「おや、やはりリーマスは気付いていたか。」
読んでいた日刊予言者新聞を折りたたみ、リーマスはジェームズのベッドに投げ捨てられていた袋の中身をばらまく。
5つ入っていたチョコレートは全て青い包装紙に包まれていた。
「これといった理由はないさ。僕が気に入らなかった、というもの以外はね。」
「ジェームズのことだから、そんなことだろうと思ったけどね。」
「リーマスやピーターだって同じだろう?あの状態をもう少し長く続けられたとしたら、イラつくのは見てるこっちだ。」
「そうだよね・・・シリウス、なんであんなにに冷たくしたんだろう・・・」
悩むピーターを横目にジェームズはばらまかれたチョコレートの1つを包装紙から取り出し、口の中に放り投げた。
「まぁ、それはそのうちはっきりするさ。」
がりっ、とチョコに包まれていたナッツが噛み砕かれた。