「・・・・・・さむ、」





身震いするほどの寒さで目が覚める。

いつもなら丁度よい暖かさに保たれてるホグワーツの部屋。

なのに今日は布団に入っていても寒い。





『おはよう。外見てごらん。』





頭の中に声が響く。

眠たい目をこすりながら起きて、窓にかかった真紅のカーテンを開ける。

眩しいくらいの銀世界。きっと生まれて初めてみるその光景。

ホグワーツは雪に覆われていた。










スノーフレークオブシディアン










「うわぁー・・・」





膝半ばまで積もった雪を踏み均しながら、校舎から禁じられた森の方へ歩く。

時計を見たらまだ日が昇って間もないようで、誰も起きていないようだった。

俺は雪がこんなに積もっている景色を見たことがなくって、また寝る気にもなれず高揚した気分で外に出た。

冷え切った空気を吸い込みふと前をみると、雪の中で何かが動いていた。

ばさばさと暴れてる黒い・・・鳥?

怪我でもしているのか雪で溺れているかのように羽をばたつかせていた。

その右側から近づく影。茶のと白の虎柄の猫だった。

猫は獲物を見つけ雪の中をそろりそろりと歩いていた。

このままだとあの鳥は食べられてしまう・・・!?

あまり・・・いや絶対見たくない光景が予想でき、慌てて杖を構えた。





「うわ・・・それはダメ!”ウィンガーディアムレビオーサ”!!」





咄嗟に出た浮遊呪文は猫が鳥に飛び掛るよりも早く掛かり、鳥は羽を使わず宙に浮いた。

雪の中ではうまくジャンプできず、浮いた鳥を仕留められなくなった猫は恨めしげにこちらを見てどこかにいってしまった。

宙に浮いたことに驚いたのか、黒い鳥は暴れることをやめ大人しくなり、浮遊呪文によって俺の側までやってきた。

黒い艶やかな羽に細長く先が尖った嘴。日本ではよく見かけたカラスだった。

雪の中何時間ももがいていたんだろう。腕の中にきたカラスは冷たくぐったりとしていた。

まずは怪我した翼の手当てをするため急いで部屋に戻った。










翼に添え木をし、包帯で痛まないように固定する。

体が温まったからかカラスは少しだけ元気になり、くりくりとした丸い瞳で俺を見上げていた。





「これでよし!気持ち悪いかもしれないけど、暫く大人しくしてたらまた飛べるようになるからな。」





言葉はわかってないだろうけど、カラスに言い頭を撫でてやる。

カラスは大人しく撫でられている。人に慣れてるなぁ・・・

ホグワーツにいたってことは、もしかして魔法使いに飼われてたとか?

御伽噺のカラスを連れた魔女を思い出し笑うと、目の前のカラスは首をかしげた。





”何が面白いのです?”

「いや魔法使いにカラスはここの世界でも定番なの・・・かなって・・・?」





俺の声とも頭の中の声とも違う声がする。

その声の発生源は目の前の首をかしげたカラス。





「は、え?!」

『へぇ、これは珍しい。』

”もう一方いらっしゃるのか?これは奇異な・・・

 いや、それより魔法族のお方。助けていただき有難う御座います。”

「カラスが・・・しゃべった・・・」





黒い嘴がカチカチと音を鳴らすたびに聞こえる、少年のようなアルトの声。

それは口から発せられているというよりテレパシーのようなものに感じたけど、間違いなく目の前のカラスが人間の言葉で話していた。





の指輪の力じゃないかな。首にかけてるだろう?』





指摘されて思い出す。俺の首にはチェーンに通された指輪がゆれていた。

言語を翻訳するといっていた指輪。動物にも効果があるなんて、さすが魔法・・・





「えーと、怪我大丈夫かな?」

”はい。”

「そっか。みんな起きたら魔法生物飼育学の先生に見てもらうけど、今はそれで我慢してくれな。

 えっと・・・名前は?」

”名、ですか・・・”





名前を聞くとカラスは急に元気がなくなってしまう。

どうしたの、と尋ねるとカラスは躊躇したが話し始める。





”名は、我が主となる方に付けて頂くもので、私にはまだ名がないのです。

 しかし我が主は姿を消してしまい、今も行方知れず・・・

 そこで、貴方様にこんな事まで頼んでしまうのは申し訳ないのですが・・・私に名を付けていただけないでしようか?”

「俺が?!」

”名を付けられて初めて我等一族は生を受けます。

 命の恩人である貴方様ならば、主も許して下さるでしょう”

「名前・・・」





カラスは期待に満ちた目で俺を見上げる。

急に名前つけてくれって言われても・・・

戸惑いながらもこのカラスの話を聞いてしまったら、つけてあげないと可哀相だよな。

どんな名前がいいかなぁ・・・カラスの瞳は輝いて・・・まるで黒曜石のようで・・・





「・・・ディアン」

”ディアン?”

「そう。黒曜石の英語の名前が『オブシディアン』っていうんだ。

 でもそれじゃあ長いからディアン。・・・気に入らないかな?」

”いえ!有難う御座います。”

「よかった。あ、俺の名前はツキトっていうんだ。

 ディアン、怪我が治るまで宜しくな。」

”はい。暫しの間お世話になりますツキト様。”

「様はいいよ。」





頭をさげ丁寧にお辞儀をしたディアン。

どこまでも丁寧な黒い頭に苦笑しながら指で撫でて挨拶を返す。





こうして一人部屋で寂しいと思っていた俺に、同室の友達ができた。