夕立の日から数日。

ディアは相変わらず毎日俺の様子を、気に入ったのか人の姿で見に来てくれる。

あの時の事は結局聞けないまま等閑なおざりになっていた。










賽は投げられた










こっちに来てひと月経った。

夏の暑さは盛りを迎えて、外で働くには辛い季節となった。

辛い・・・というより、危険な季節と言ったほうがいいだろうか。

暑さは気力だけでなく体力をも奪い、俺のように人を倒れさせることもある。

木陰で濡れたタオルを額にのせ、的確な処置で楽になってきている身体を横たえながら、中々帰ってこないカンタとカコを心配した。

ついさっきまで介抱してくれていた2人は、さらしていたスイカを取りに川に行ったっきり戻ってこない。

もしかして何かあったのかもしれない。身体が動けそうなのを確認して起こす。

すると聞こえた元気な声。2人がスイカを抱えて戻ってきた。





「まだ寝てたほうがいいんじゃないか?」

「もう大丈夫だ。それより、2人とも遅かったな。」

「それがね、スイカが流されちゃってて。下流で拾ってもらえたんだけど、その人たちスイカを食べたがってたから、

 スイカを賭けてポケモンバトルしてたの。」

「へー。勝った?」

「そいつら強くてさぁ、負けたよ。

 特にあの赤い帽子の奴のピカチュウは強かったなぁ・・・」

「赤い帽子、ピカチュウ・・・」





聞き覚えのある容姿。サトシとピカチュウだろうか。

ここアニメの方のポケモンの世界だったのか。初めてこの世界のことを知ったような気がする。

サトシがいるなら会ってみたいなー。俺からしたら彼らはテレビの中でしか見れない芸能人と一緒だ。





「なぁ、そいつら何処にいったんだ?」

「神殿のほうに・・・・・・」





神殿を指差すカンタが止まる。指差した場所にあったのは天に昇る水の竜巻、それが空に開いた穴へと吸い込まれている光景だった。

あれは何だとか、危ないとか、考える間もなく俺は駆け出していた。

竜巻の向こうにディアがいたのだ。





ッ?!」

「カンタ、カコ!ヘラクロスとアゲハント出しとけ!

 それと皆に町から出るようにって伝えろ!!」





空に開いたあの空間。ディアがいたような世界と同じようだったけど、禍々しい感じがした。

嫌な予感がする。

神殿から一番遠い場所にいたことが焦燥感を膨らました。










着いたのは神殿を見上げれる湖。いつもディアと会う場所だ。

そこはいつものように静まりかえっていた。・・・いや、いつも以上に静まりかえっていた。

ここまでの道も、昼間は鳥ポケモンや虫ポケモンが見られる筈なのに1匹も見かけなかった。





「ディア!」





名を呼ぶと直ぐに空間に裂け目が出来、そこからディアが現れた。

今日はポケモンの姿のままだ。





「ディア、何が起こってるんだ?この辺りの様子もおかしいし・・・嫌な予感がする。」

『我にも分からぬ。ただ不穏な気配があるのは確かだ・・・

 ・・・?!』





ディアが空を見上げる。俺も続いて見上げた。

びりびりと激しい力を発しながら、何かが来るのが感じられた。

空を裂いて現れた歪んだ空間。現れたのは白い身体の巨大な生物。





『あれは・・・』

「ディア?」

、町から離れろ。アレは・・・』





ディアが言うよりも白い生物が動く方が早かった。

白い生物は橙色に輝くエネルギーのようなものを天に打ち上げる。

それは花火のようだった。打ち上げられた光の球は暫くすると破裂し、茜色の尾を引きながら町を破壊した。

茜色のエネルギー派は湖の方にも向かってきて、ディアが攻撃をあて相殺した。爆風が吹き荒れる。





『わかっただろう、アレは危険だ。だから逃げろ。』

「ディアはどうするんだ・・・?」

『我等はアレを止めればならん。・・・止めることは出来ぬかもしれぬがな。』





苦笑がディアの口から漏れる。

一撃で敵わぬ相手だと悟りながら、戦おうとしているのだ。

俺は止めようと口を開くが、ディアは駆けて行ってしまう。





「くそっ・・・!」





ディアを置いて逃げることなんて、できるはずがない!

ジリジリと胸の中で何かが焼けるような焦りと危機感。

状況も気持ちも、全てのわけが分からないまま神殿への道を駆け上った。

神殿上空ではディアと他の2匹、強大な力を持った白い生物の戦いが始まっていた。