「…絶対、また会おうな……っ!」
約束はまだ果たされていないまま
旱天の慈雨
ディアと別れたあの夏から2年が経とうとしていた。
夏が終わって、秋が来て。冬が来て、春が来たら進級をして。それをあっという間に2回繰り返した。
今は高校3年の夏だ。陸上部の大会は終わっている。
大会予選で入賞はしたものの、優勝して次の大会に進めなかったオレたち3年生は引退し、わずかに残った夏休みを過ごしている。
次のイベントとしては受験勉強が控えているんだけど、それはこの暑い日々が終わってから向き合おうと春幸と笑い合って先延ばしにしていた。
空を見上げると、時々ディアと一緒に過ごした時間は暑さのせいで見た夢だったのではないかと思ったりする。
でも、ディアの声。赤い瞳。人肌より冷たい、その手が触れた感触。
……キスした時の優しさ。胸が痛くなるくらい全部覚えていて「夢じゃなかった」とわかる。
夢じゃない、ってわかるから会いたいと思っても会えないし、声も聞けないことが苦しく感じる。
「絶対、また会おう」って言ったけど、いつ会えるかなんて全然わかりもしない。
「会いたい、なぁ…」
「ん?何か言ったか。」
ため息と一緒に思わず吐き出したら聞こえてしまったようで、隣にいた春幸が心配そうに声をかけてくれた。
笑って「何でもない」というと、不思議そうな顔をしたまま「ならいいけど」と再びグラウンドに目を向けた。
今は『OBの指導』と称して二人でグラウンド横の日陰から後輩たちの走る姿を眺め勉強をさぼっている。
空はどんよりと曇っていて日陰に居ても特に涼しくはなく、照りつける太陽とはまた違った暑さが肌にまとわりついているようだった。
これはもう少ししたら雨が降るかな…
雨が降ってくれた方がこのじっとりした暑さもなんとかなるかもしれない。
鞄の中に入れっぱなしだった折りたたみ傘を確認してから、雨がこの気温を打開してくれるのを待つことにした。
オレの予感は当たった。
ぽつりぽつりと降ってきた雨は、あっと言う間にどしゃぶりとなった。
陸上部の練習も当然中止になって、オレと春幸も仕方なく家に帰ることにした。
家の方向が違う春幸とは校門で分かれた。一人で傘に当たる雨の音を聞きながら帰る。
さあさあ、さあさあ
雨のお陰で少し肌寒くも感じる気温が、ディアのいた『時の空間』を思い出させる。
もうちょっと寒かったかな。あそこにいてディアは風邪とか引かないのかな。
ずっと寒いところにいるから肌が冷たいんじゃないのかな。
そんなことを考えていたら、ディアが恋しくなってきた。
じわりと目に雫が溜まって視界が揺らぐ。拭ってもそれは次々にあふれてきた。
道には誰もいなかったけどもし誰かに泣いている姿を見られたら恥ずかしい。
見られても雨に濡れてしまった、と誤魔化そう。
傘を傾けてわざと雨に降られよう…としたとき、空に見つけてしまった。
――――ぱっくりと空いた 時空の裂け目
「………え、」
パシャンと足元で水が跳ねた。
驚いて落してしまった傘が水たまりに落ちたんだ。
次に感じたのは体全体にかかる重み。
目に飛び込む 白と紺と
一瞬キラリとしたのはチョーカーの宝石かな
どさり、と尻もちをついた身体には長い肢体に包まれていた。
「…ようやく会えた…」
「でぃ…あ…?」
時空の裂け目から飛び出て、オレをきつく抱き締めたのは
オレが会いたいと焦がれていたディアルガだった。